目を閉じたら、別れてください。
処方箋が切れた夜中、私は寝ている間も咳が酷かったらしい。
ポンポンと背中をあやされて、薄く目を開いた。
背中から抱きしめられて、頭も撫でられた。
肩に顔をうずめて、きっと眠たいんだろう彼が何度も頭をなでてくれた。
その手が、私の顔に触れた。
泣いていないか、後ろから延ばされた手に、――指輪が光っている。
「―-っ」
声を殺して泣いた。
恋愛をしたかったな。
私、進歩さんと恋愛して出会いたかったな。
会社のためじゃなくて、彼に恋愛して選ばれたかった。
きっと別れを切り出しても、彼は会社の地位のために私を離さないんだろうなってわかってる。
それを利用して好きな人を、自分のそばに縛り付けられるなんて、ラッキーだと思えばいいのに。
なのに垂れる涙は、納得してくれていない。
好き、苦しい、別れたい、そばにいたい。
矛盾した気持ちが、ゆっくり私を壊していった。