目を閉じたら、別れてください。
「まあ、そうですね」
「うちの姪っ子、最近……」
言いかけて雑誌を閉じて窓を見る。
パソコンでUSBのデータを読んでいたが、顔を上げた。
「私も姪っ子もロマンチストでね。君たちがあまり幸せに見えない」
「自分に紹介したのは、専務じゃないっすか」
「それは君が完璧に、姪っ子の王子様を演じてくれると思ったからだ。今は素で付き合ってるだろ」
確かにお見合い当初は、彼女の好きそうな寡黙で知的で包容力のある年上の彼氏を演じていた。
が何を考えているのか予測不可能な彼女には、今の俺でも問題はないらしい。
少なくても『エッチが下手』と俺をバカにしたことはすでに撤回してもらっている。
抱くとき、心底ほっとしたような安心したように体をつなげてくれている。
「素で付き合った方が、連れ添うにはいいんじゃないですか? 俺だけ無理するより」
「君、いつもそうやって自分の考えは間違えてないと思っていて、後悔してきただろ」
専務は、一言一言、区切るように言った。
「ドレスの試着、ここ二か月姪っ子は一度も行っていないらしいよ」