目を閉じたら、別れてください。

「そういえば、小学生のころまで喘息だったかも」
「周りに吸う人は?」
「叔父さんが吸う。けど、叔父さんは一日数本って言ってたからヘビーじゃないかな」

「神山は一日一箱吸うかもしれねえな」

咳をしながら、思い出す。
確かに彼がいるときは咳をするけど、でも進歩さんだってベランダとか換気扇の下に移動してくれてる。

「どっちかといえば、精神的な部分?」

淡々と言われ、目が泳いだ。精神的な部分、といえばそうなのかもしれない。
自分でもよくわかっていない。

「俺と違って、神山は誠実だよ」
「ヨッシーさんに比べたら、私の周りは誠実な人だらけです」
「じゃなくて、……我慢したまま結婚する意味を知りたい」

剛速球が私めがけて放たれた。
避けようと思っても、目の前で座っていて避けられなかった。

「無理してる。やめれる理由はたくさんあるのに、無理してる?」
「……してないし、そうだ。喘息でも精神的なことでもなかった」

彼が触れてくれたら咳が止まるもの。

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