目を閉じたら、別れてください。
フライパンに垂らしていた油が、ドバドバと海になった。
とうとうばれてしまったのか。私の中で今、学校をさぼっていた理由を必死で探す学生のように色々と理由を並べてみた。
なのに続く彼の言葉に拍子抜けした。
「体調悪かったから仕方ねえけどさ。サロンの人も予約時に人が来ねえと慌てるんだから、もう少し迷惑かけねえようにしような」
「……うん。つい二人で選ぶものばかり優先してしまってた」
一度信じてしまうと、彼の中で私は嘘を言わない人になっているのかな。
どんどん鼻が伸びていっているのを誰も気づいていないんだ。
小さな変化に気づかないほど、私は彼にとってもう何があっても結婚をする相手なんだろう。
「……あのさ、俺の前では無理せず本音を言ってほしい」
みじん切りした玉ねぎを炒めながら、彼が溜息を吐く。
「結婚式ってさ、仕事抱えたまま準備すんのは大変だろ。無理してる部分があるなら俺に
言え。悪いが、俺は言わなくても察せるほど女心を分かってねえからな」
「あはは。正直すぎるね」