目を閉じたら、別れてください。
「ふうん」
「信用しろよ、こら」
横から突かれて、身をよじって逃げる。
信じられるなら信じてる。
けれどそれが本心だってちゃんとわかってる。
曖昧に笑っていると、彼の眼がスッと冷たくなっていくのが分かった。
きっと私が女々しくていらだったんだと思う。
ふっと魔が差した。
彼は、ここまで進んだ式をどうやっても、――何をしてもきっと無事に挙げられるように私のご機嫌を取っているに違いない。
面倒くさくない相手だから。
「安心して。私ね、お見合いしたのは、きっと進歩さんに出会うためだと思っている」
「……なんだよ、急に」
「叔父さんの紹介だもの。どうしても手に入らない相手より、二番目の方が幸せになれるっていうじゃない?」
彼の顔が面白いほど凍っていいくのが分かる。
だから私は、呪文のように嘘を唱えた。
「どうしても愛してはいけない相手が独身でずっと傍にいてくれることに甘えていたけど、私も前に進みたいの。だから結婚したいの、進歩さんと」
嘘を、唱えた。
きっとこの嘘は、最初についた嘘よりも彼の胸をえぐるに違いない。