目を閉じたら、別れてください。

それにしてもお爺ちゃん、私に直接言ってくれたらいいのに。
うちは親戚が少ないから、席は圧倒的に神山家、神山商事の方が多いから少しぐらい増えても問題ないのに。






「あのさあ、その、神山は不器用って言うか、悪気はなかったとおもう」
「……びっくりした。休憩室の前に何? 私を待ち伏せしてたの?」

電話から戻ると、休憩室の前に申し訳なさそうに笹山が立っていたので、心臓が止まるかと思った。
先日、酔っぱらったお詫びにシュークリームをもらったばっかなのに。

「その……お前ら、あの二次会の打ち合わせのあとからおかしい、から」
「そう。でも笹山が心配しなくても大丈夫。ダメなときはどうしても駄目だし」
「でも、何かあったら、俺にも相談してくれてもいいじゃん。知らないとこでまたお前らお互い傷ついてるとか、友達甲斐ないだろ」

「……友達だったの」
「ひでえな」

茶化して誤魔化したら、笹山も深く聞いたらいけないと空気を読んでくれたらしい。
頭を数回ポンポンとセクハラだけして去っていった。

悪いのは、嘘つきの私なので、優しくされたくはなかった。
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