目を閉じたら、別れてください。
「どこかな」
マジックBARなんて面白い場所、どうして今まで教えてくれなかったのか疑問だけど、場所はいつもとは違う本社とは反対方面の駅にあった。
駅の改札口から見えるテナントビルの三階。
行ってみるが、普通の珍しくもないBAR。
海の絵が壁に沢山飾られていて、サーフィンの道具が壁に立てかけられていたり、キープボトルに紛れてサーフィンの大会のトロフィーが飾られている。
場所を間違えたのかなって焦っていたら、ぬるっとお店の奥から店員が出てきた。
「いらっしゃいませ。お一人ですか」
「あ、いえ。斎藤で予約していたと思うんですが」
「あー……さいちんの」
サイチン?
くすくすと楽しそうに笑っている男の人は、オレンジ色の眼鏡に短髪、黒のブラウスにネクタイ。少し軽薄そうな印象の若い人なんだけど、私を見るなりいたずらっ子のように笑う。
「サーフィン仲間なんだ。さいちんとは。一番奥の部屋予約してたけど、行く前に1ドリンクね」
「じゃあ、えっと炭酸系のノンアルコールで」
「君も飲まないの。まあいいや。じゃあ、こっちね」
メニューをカウンターで広げられて、適当に頼む。
すると『それを選ぶと思ってました』といつの間にか出来上がっていたグラスを渡されて呆然としてしまった。
マジックBARだけあって、すでに始まっていたようで感心してしまう。
「お連れ様はもう中でずっとあなたをまっていらっしゃいますよ」
「え、もう来てるんですか。ありがとうございますっ」
叔父さんには先に入っててくれってい言われてたから、携帯を見ながら中へ入る。
着信もメッセージも来ていない。
「よお」