目を閉じたら、別れてください。
座り込んで立てた膝に、顔をうずめながら進歩さんは笑った。
「お前、面倒くせえな。自分から恋愛から逃げて、振り回せて楽そうな相手だから俺を選んで、ひどい振り方しといて――面倒くさすぎだろ、その性格」
ククッと笑うと『まじかよ』と体を震わせて声を我慢している様子だった。
「……」
彼には、こんなに悩んでいる私はただ面倒くさいだけ。
そう思ったら絶望しそうだった。
なのに次の瞬間、彼は笑いすぎた顔をあげ、目じりの涙を指先ではらって私の髪を撫でた。
「これから一生、お前の面相臭い思考に振り回されると思うと、すげえ楽しみ」
「……え、は?」
「ここまで考えが分からなくて、でも何考えてるのか知りたいけど振り回されるの楽しいっての、これってなんていえばいいんだろ、すげえ面倒くさいのに、――俺は幸せだけど」