目を閉じたら、別れてください。


「な、その言い方ずるい。ずるい……」

私だけが面倒くさい女で、それを全部受け止めれる包容力をアピールしやがって。
「不安にさせて悪かった。俺と恋愛してくれる?」

そんなずるい男のずるい言い方にときめく私もきっとどうかしているんだ。

「すげえ、好きだよ。これから嘘つかねえ」
「うー」
「桃花は? また嘘つく? どうする?」

「つきたく、ない」

誰かを傷つける嘘なんて。それが好きな人を傷つける嘘なんて、もう付きたくない。

「俺はお前ととっくに恋愛してるつもりだったんだからな」

不機嫌に唇を尖らす彼に、ごめんねって謝ったら顔が近づいてきた。

優しく触れた唇は、アルコールと煙草の残り香で、大人の味がした。

恋愛がしたいって言葉はきっと色々とめちゃくちゃだったと思う。
それなのに、笑い飛ばして受け止めてくれて、私の気持ちを軽くしてくれた。

それだけで私は天にも昇る気持ちになるのだから、ちょろい。

あれもこれも嘘。嘘でから回った私たちは、全部本当になるまでこの部屋から出られない。

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