目を閉じたら、別れてください。
しんみりと言われて、あの時は思わず噴き出したのを覚えている。
「傷かどうかは分からないけど、もう許してたことなんで俺からは責めるつもりはないっすよ」
「でも君は――どこかでまた嘘を吐かれても傷つかないように、逃げ場を用意しているように思えたんだが」
友人前で強がるのは、嘘をつかれた時の逃げ場ってことか。
言われないと気づかなかった。
でも確かに、俺は桃花を包み込んでやって安心させてやれる男じゃねえかもしれねえけど、あんな面倒くさいとこが可愛い女を、好きになるのは俺ぐらいだと思っている。
どんな奴が現れようと、俺以上に好きになれる奴はいない。
嘘も含めて可愛いと思ってんのは俺だけだろ。
それに今は逃げ場も必要ない。
吉田たちの前でも、強勢はやめているし。
「暑いな」
土地管理、売買専門である部署だが、何分、俺も知識はほぼない上に新しく始めた部署。
今は提携先とこうやって実際に歩き回って確認する方が多い。
桃花の祖父の山を買い取ったが、今日はそこを伐採したあとに建てられる建物の位置を確認していた。
管理は確かに杜撰だったが、平らにしてしまうので問題はない。
数年先にここにファミリー向けの大型のショッピングモールができ、タワーマンションが建ち……と考えるとしばらくは走り回ることになる。
今、結婚しておかないと数年は忙しいので、嘘に気づけたタイミングがちょうどよかった。