目を閉じたら、別れてください。

会社の番号ではなく、専務本人の携帯からの着信に変な胸騒ぎがした。

かけなおすと、ワンコールで繋がったのもおかしい。
「もしもし、どうしました?」
『良かった。繋がった。いいかい、よく聞いて。落ち着くんだよ』

専務の声はいつもの淡々とした冷静な声ではない。
そして専務の声の後ろが騒がしかった。

『君は今から急いでこちらに戻ってこないといけないんだ。いいかい、事故らないためにも冷静になってから帰ってくるんだよ』
「……桃花に何かあったんですか?」
『……ああ、倒れた』

酷く言いにくそうな声で、口籠るが吐き出すように教えてくれた。

『姉さん……いや、桃花のご両親が出張等で重なっていてね。私が今病院にいる。だが――君の方がいいだろう』
「倒れたって、病院はどこですか?」

救急車で運ばれたらしく、仕事場の近くの総合病院だと告げられると慌ただしく電話は切られた。

「部長、電話終わりました?」
まだ顔色が悪い森が俺の様子をうかがってくるのが分かったが、俺は森を車から出るように促した。
「悪いが病院に向かう。もう少ししたら代わりに誰か来るからそれまで待つか、乗って帰るか、どうする?」
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