目を閉じたら、別れてください。
エピローグ


『エッチが気持ち良くないから』

最低な嘘を吐いた。

『事故の後遺症で、妊娠できなくなったの』

最低で、自分を守るために相手を傷つけるだけのウソだった。

『結婚なんて利益あればそれでいいじゃん』

周りに嘘を吐かれた。

『本当に好きな人と結ばれないから、進歩さんでいいよ』

好きじゃないと嘘をも吐いた。

嘘だらけ。あれもこれも嘘。
嘘を身にまとって防御してでも、一緒に居たいと、彼がいいのだと、私の心は求めていた。

ゲホゲホと咳をする。心は彼が好きなのに、体は拒否していた。

自分を利用している人を好きなんて、体が苦しいと心の代わりに泣いてくれていた。

『そんな面倒くさいお前と、一生一緒かよ』

くしゃくしゃに笑い、意外と甘えん坊な彼。
大きくて骨ばった指が好き。その指が腕時計を外すのが好き。
だるそうにネクタイを緩めるのが好き。
私のウソで怒って、頬をつねるのが好き。

意地悪を言うのに、指先が優しいのが好き。

格好いいのに、私みたいな面倒くさいな女を好きなんて変わっているのに――好き。

ああ、めちゃくちゃにこの人が好き。
< 202 / 208 >

この作品をシェア

pagetop