目を閉じたら、別れてください。
エピローグ
『エッチが気持ち良くないから』
最低な嘘を吐いた。
『事故の後遺症で、妊娠できなくなったの』
最低で、自分を守るために相手を傷つけるだけのウソだった。
『結婚なんて利益あればそれでいいじゃん』
周りに嘘を吐かれた。
『本当に好きな人と結ばれないから、進歩さんでいいよ』
好きじゃないと嘘をも吐いた。
嘘だらけ。あれもこれも嘘。
嘘を身にまとって防御してでも、一緒に居たいと、彼がいいのだと、私の心は求めていた。
ゲホゲホと咳をする。心は彼が好きなのに、体は拒否していた。
自分を利用している人を好きなんて、体が苦しいと心の代わりに泣いてくれていた。
『そんな面倒くさいお前と、一生一緒かよ』
くしゃくしゃに笑い、意外と甘えん坊な彼。
大きくて骨ばった指が好き。その指が腕時計を外すのが好き。
だるそうにネクタイを緩めるのが好き。
私のウソで怒って、頬をつねるのが好き。
意地悪を言うのに、指先が優しいのが好き。
格好いいのに、私みたいな面倒くさいな女を好きなんて変わっているのに――好き。
ああ、めちゃくちゃにこの人が好き。