目を閉じたら、別れてください。
意外と独占欲の強い進歩さんは、キスしている姿を見せたくないと言っていた。
私も恥ずかしいから見せたくないので、頬にしようねって約束していた。
なのに、彼はベールを持ち上げると、自分がその中に入って、誰にも見せないように一瞬口づけた。
彼の子どもっぽい行動に、クスクス笑っているのは沙也加だけだった。
『進歩さんと恋愛がしたかったっ……』
そんな馬鹿な私の願いを、毎日叶えてくれる。
私にはこのキスさえ、少女漫画のようにロマンチックで嬉しくて、涙がボロボロこぼれてしまった。
いっぱい泣いた。
そのほとんどは、自業自得だったとしても。
私はその倍、幸せに包まれていたと思う。
その倍、あなたの隣でドキドキしていた。
進歩さんと歩くバージンロードは、ぐしゃぐしゃの視界でなにも見えなかった。
皆が投げてくれる花弁が、キラキラと分かるぐらいで、あとはもう鼻水が出ないように唇をかみしめるのがやっとだった。