目を閉じたら、別れてください。
「は? 待たせた本人が言う?」
「うわ、瓶半分以上飲んでる。お前、酒強かったっけ?」
開けた日本酒の瓶を持って、目を大きく見開く。
「アルコール度数も高いじゃん。自分の飲めるやつを頼めば良かったのによ」
「どこで注文するのか分からなかったの。というか、メール返信してよ」
「仕事中って言っただろうが」
煙草とライターをテーブルの上に置くと、灰皿を引き寄せた。
そして私の方を睨む。見つめるというより睨むって言う感じだ。
「……お見合いの時、眼鏡かけてたよね?」
「ああ、伊達な。その方が知的に見えるだろ」
「……ウソツキ」
自分を棚に上げて、零れ落ちた言葉。
お酒が回って変なテンションになった私の思考は、自分でもブレーキが分からなかった。
「どっちが嘘つきか。お前分かってんのか?」
低い声。不意に泣きたくなった。
目の前のこの人は、私に好意を持っているふりをしてくれていた神山進歩の本性だ。
私に合せていた一年前の神山進歩ではない。
本性を曝け出して私に敵意を向けている。
「ちゃんと謝りたいって思ったからこうして呼び出したの」