目を閉じたら、別れてください。

「いやですよ」
「嘘の証拠を見せろよ」
「せくはらー!」

身を捩って逃げようとしたのに、手は掴んで離さない。
立ちあがれない私は、心底面倒くさそうに、彼を拒絶するようにため息を吐いた。

「見せたら、終わりにして」

面倒くさいから好きって、意味が分からない。
振り回されたいって、この人の性癖はドMなのだろうか。

スカートを少し下にずらして、お腹を見せた。

「この傷だな」

彼は驚くほど落ち着いていて、本当に厭らしい気持ちではなかったらしい。
私の傷口を、一年前と同じぐらい優しくなぞった。

けれど。
「この傷を写真で見て『跡が残ったな……』って俺が呟いたんだよ」
「叔父さんに見せてもらった時に?」
「そう。『だからちらせばよかったんだよね』と言われたときの俺の気持ちを10文字以内で答えろ」
「ひいいい」
「四文字じゃ足りねえな」

「くすぐったいっ」

お腹を撫でられてくすぐったくて上を向く。
笑って口を手で隠していたら、その手を退けられた。

降りてくる顔。
くすぐられて避けられない私。
伸びてくるもう一方の手が、口を覆っていた手を掴んだ。

降りてくる唇。
私は、目を見開くことしかできなかった。
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