目を閉じたら、別れてください。
襲われているというのに、私は――。
どんなふうに喘げばいいのか、どれぐらい演技したらいいのか、抵抗はしたら止めてもらえるのか考える。


キスは甘い。お酒を飲んでいたくせに舌が絡むとぴりぴりと痺れるような甘さが全身を襲う。


男は、女を欲情させるときにキスをするらしい。だから深く舌を絡ませて、その気にさせてくるのだろう。
でも私は、エッチに抵抗がある。貧相な体を見せつけて、可愛い嬌声なんてあげきらない。


背中に手を突っ込んでいた進歩さんが、慣れた手つきでブラのフォックを外した瞬間、敵わないと諦めた。

仕方がない。昔は何度もエッチした中だ。
一発、抵抗もせず感じもしなかったら、つまらないって諦めてくれるはず。

キスを拒めなかった私も悪い。
嘘を吐いた私も悪い。
エッチが気持ち良くないと傷つけた私も悪い。

いや、全部私が悪いんだ。

目を閉じるから、それで諦めてください。
目を閉じて、好きにさせるから、終わったら今度こそ別れてくださいな。


「おい」
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