目を閉じたら、別れてください。

「……私は」

自分なのに自分の感情がコントロールできなかった。
私の気持ちなのに、なんで私が一番分からないんだろう。

一方的に別れた、今度は流された。

そして今度は、断わり方が分からない。
嫌われてもいいからと捨て身でぶつかったのに、受け止められた。

「もう一歩か。あとは何が足りねえの?」

あと一つ足りないモノ。

それを私は知っていた。
真っすぐにぶつかってくるこの悪魔みたいな男に足りないものではない。
私に足りないもの。

「金曜は、俺が決めていい? 行きたい場所ある?」
「……」
「ないなら、また雰囲気いい場所に連れ込むけど」
「私が決める」

とことん、嫌われる態度や行動をすれば満足なのかな。
見つめ合う。なのに互いの心は何一つ手に入らない。
何一つわからない。何一つ、思い通りにいかない。

だったら、嫌われないといけないのだと知った。

「決まり。店とか時間決まったら連絡して」
「したくない」
「しろ、こら」
なぜか彼は始終楽しそうに笑っていた。
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