目を閉じたら、別れてください。

感情がコントロールできない。
どうして、こうなったんだろう。

もしかして、一年前に別れなくてあのまま結婚していたら、彼はあの知的で寡黙でイケメン。私の理想を演じたお人形のまま。

「はああああ」
「朝帰りの先輩、どうしたんですかあ?」

平日の午前中は、引っ越しシーズンでもない限り忙しくない。
私も泰城ちゃんもひたすら書類整理、車の中身の掃除、デスクの前に植えられた木のようにずっと動かない。
ので、暇で暇でしょうがないのだ。


「どうもこうも。どうしても相手の前で、冷静にいられないんだよね。もう少し私、感情のコントロールできる子だったのに」

「ええー。恋なんてそんなものですよお。好きな人の前では数か月は上手くいかないです」

好きな人ではない。と言いたいけど説明がややこしい。

「コントロールできなくても、嘘さえつかなくて、ちゃんと好きだよって意思表示してれば数か月したら慣れますよ」

ウソだらけなんです。ウソだらけなのに、身体だけは重ねてしまったのです。
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