目を閉じたら、別れてください。

「なんだよ。俺の奢りはご不満か」
「いや、ラッキー」
「もう一人、誰か呼んで四人で聞こう。適当に同期誘ってもいい?」
「お願いしまーす」

都築ちゃんの一声で、夜ご飯が浮いてしまった。
女って自分の武器を知っている子は怖いな。

でも確かに、すごい。尊敬してしまう。
「勝手に決めちゃってすいません。大丈夫でした?」
「え、うん。男友達とか全くいないから、笹山でも藁をも掴むなんとやらだよ」
「笹山さんの扱い酷い」

笑いつつも、これで良かった。
少し離れたところに居た笹山が、思い出したかのように私たちのところへ近づいてきて、片手をあげる。
「あのさ、神山誘ってみよう。あいつなら女にモテ――」
「馬鹿じゃないの!?」
「なんで!?」
「私とあいつの関係を思い出して」

元婚約者でしょ。と叫ぶと、笹山が思い出したように舌を出す。
男の舌だし顔とか全く可愛くなくて殺意しか出なかった。


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