目を閉じたら、別れてください。
「いや、一ミリも都築さんの気持ちが分からねえわ」
「俺も。分からねえ」
20時からだらだら始まった飲み会は、私の『好きでもない相手を拒めなくてずるずる関係が続いているが終わり方が分からない』という内容で男性二人が納得できないと首を傾げたことから始まる。
しかも笹山が連れてきたのは、友人らしく私と笹山と同期だが既婚者だった。
「相手に嫌われたいから、できることはしたんですよねえ」
「他に好きな人がいるとか、恋人がいるとか」
「うーん。これ以上嘘を吐いたらなあ。前科があるんだもん」
「既婚者のよっしーからも何かアドバイスを」
よっしーという、ずっとたこわさをちびちび食べている眼鏡の男は、またまた首を傾げた。
「既婚者なのに女がいる飲み会に参加する男ってどう?」
「えええ。超最低ですう。私ならありえないですう」
「泰城ちゃん……」
「でしょ。だから、男の影をつねに匂わすとかね。特定の相手はいないけど、何か怪しいみたいな」
「なるほど!」
つまりよっしーは、離婚したいからわざと女のいる飲み会に来たのか。
まどろっこっしいな。自然消滅を狙う姑息さが感じられる。
「お見合いしてみようかな。叔父さんの紹介で、スペックは相手より超低い人。そうすれば、自分はこんなスペックでも相手にされないのかってなる」
「そんなことより、本人呼び出そうぜ。ほーんにーん」