目を閉じたら、別れてください。

たった二杯のビールで酔った笹山が、スマホを取り出したので水を口に押し付けた。
全く相談相手にならない、頼りない相手だった。

よっしーは、ご飯の写メを撮って、SNSに載せている。
カオス。カオスな世界だった。

私は生ビールとからあげを目の前に何をしてるんだ。

バカみたい。

まともに誰かと付き合ったことがないから、ちゃんとした別れ方を知らない。

「性格に難ありなのに、どうして私に付きまとうのかな、よっしー」
「性格に難ありって、都築さんの方が?」
「くっそ。初対面の人にもそう思われるのか。そうか」

ビールをごくごく飲みながら、次は可愛いカクテルでも飲んで可愛い乙女をアピールしてみようかな。

「いや、都築さん、同じ大学ですよ。俺たち、経済学部。都築さん、観光学部でしょ」
「は、うそ。笹山は知ってたけど、うっそ」
「都築さん、飄々としたさっぱりした感じの美人だなあって、笹山と話したことありますよ」
「美人?」
顔の造形は、隣の泰城ちゃんに比べたら粗悪品ですが……?
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