目を閉じたら、別れてください。

「でも、なんか卑怯な気がする」

嘘を吐いた自分が言うのも変だけど、卑怯な気がする。

「あ、そっか」
嘘を吐いた後ろめたさがあるから、だ。
なるほど。
目の前の、既婚者なのにこんなところに罪悪感が全くなさそうに居る、この飄々した男は、絶対に女の敵だ。絶対に遊んでいるに違いない。

こんな風に誠実そうで女に興味なさそうなのに駆け引きを楽しんでいるからしてそうだ。

この男の場慣れ間のおかげで冷静に分析できた。

「やっぱ正々堂々じゃないと駄目だなあ。私なりに罪悪感があったのか」

「よくわからないけど、既読ついたよ」
「そう。怒らせるだけだから、嘘だよって言っといてください」


「既読ついただけだな。返信来ない」
「嘘ってばれたんじゃないですか」

そうか。根底に、罪悪感があったのか。

そうだよね。別れたいって思った時に、一番ダメージがある嘘を咄嗟位に考えたからだもんね。
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