目を閉じたら、別れてください。

「はあ……」

「先輩、そーゆうの調べないまま好きになりそうじゃないですかあ」
「いやあ、私は今は、他の人のことを考える余裕ないほど悩んでるから大丈夫だよ。ありがとう」

フルーツに適当にチョコを付け、お皿の上に置いた。
既読しかつかなかった進歩さんの動きの方が気になる。

「今日は全く参考にならなかったし、さっさと帰りましょう。私、既婚者が下心ありありで飲み会来てるの、生理的に無理です。アレルギー」
「まあ、確かに。私が知りたいのは高度テクじゃないんだよね。帰ろう」

チョコを持って帰ると、携帯を見て爆笑している二人から少し距離をとった。
さっさと食べようと思ったら、チョコはお皿に固まって貼りついて取れない。

フォークで叩きながら割って食べた。

「先輩、タクシーで帰ります? 反対ですが駅までなら私の彼氏が送ってくれそうですけど」
「いや、ここからなら歩いて帰――」

ふと何気なく視線を入り口に向けたら、上着を腕にかけてネクタイを揺らして速足で入ってくる進歩さんが見えた。

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