目を閉じたら、別れてください。
思う仲に垣をするか放っておいて。
金曜の夜。
やっと一週間が終わる。事務での営業でもない進歩さんは土日が休みだろうけど、私は明日も出勤だった。
これからもそんなすれ違いもあるし、事務所の移動で私も本社に戻される可能性もある。
そして結婚となると別れた時に色々と文句を言っていた親とも戦うわけで――この年になると結婚は相手が好きだから成り立っているとは思えなくなる。
それに元カノは、元モデルの超美人だったみたいだしね。
「難しい顔してる」
「うぎゃ」
待ち合わせ場所に、時間ぴったりに現れた進歩さんに、まるで痴漢にあったかのように叫んでしまった。
「なんだよ、その声」
「いや、考え事してたの。私だって難しいことを考えるのよ。政治とか政治とか、あと世界平和とかね」
「嘘くせえな」
楽しそうに笑う彼の顔を見上げて首を傾げる。
今日は銀色のフレームの眼鏡をしている。
伊達眼鏡だって言ってなかったっけ。
「その眼鏡どうしたの?」
「ああ。お前が好きかなって」