目を閉じたら、別れてください。

もう一度、建物の看板を見る。
唇が分厚くて、セクシーで、おまけに黒のタートルネックなのに巨乳なのが分かる。
大きな目に、気が強そうだけどどこか艶のある目。

この人に驚いていたよね。

「元か!?」

ハッと気づいて口を押さえた。
やばい。叔父さんに過去の詮索はするなって言われたのに。

「もとか?」
「あ、やー、あのタレント胸でかいなあって。名前もとかだっけなあとか」
「名前? さあなんだっけな」

首を傾げる彼は本当に知らなさそうだった。
これが演技なら、私は彼のウソを見つけることができない。

「それよりお前、手え冷たいのな」
「末端冷え性なのよ。心が温かいばかりに手足が冷えるってね」
「言ってろ言ってろ」

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