目を閉じたら、別れてください。

彼の顔を見上げれば、看板の女性もよく見える。
年齢も同じぐらいだ。名前は分からない。
けど――昨日叔父さんと見たドラマで見たような見てないような。

逸らしたいのに、彼の顔を見上げてしまい嫌でも視界に入る。

なんと嫌なものだ。
「お、ここだ。ここ。すげえ、点滴ゼリーって意味わからねえ」
「ナース服の血だらけの店員さんも居る……」

店長っぽい人は斧が刺さった帽子をかぶってる。
良かった。BARの中が異様なおかげで、さっきの看板をもやもや考えなくて済む。

案内された半個室のテーブルは、観葉植物の代わりに座ったら隠れるぐらいの檻の?風で覆われていた。

ワインは美味しいB型、ニンニクたっぷりパスタ(吸血鬼対策だよ!)とか、メニューが面白い。BARというより居酒屋だ。
「十字架のチーズセットと、A型ワインと、あと血だらけおつまみ、これとこれも」
「私もパスタ! 血しぶきサンドイッチ! 惨殺鳥の揚げ!」
「がっつり食うな」

上機嫌でどんどん追加していって、店員さんが居なくなったあと私を見た。

「こーゆうとこ来ると本当生き生きするな」

「進歩さんも楽しそうに注文してたじゃない」
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