青い僕らは奇跡を抱きしめる


 葉羽の母親は俺を冷房の効いた涼しい居間に通して、そして冷たい麦茶とお菓子を出してくれた。

 喉が渇いていた俺は、遠慮なくすぐ麦茶を口にした。


 甘いジュースを出されるより、その冷たいすっきりとした麦茶は香ばしくてとても喉越しよく、俺の喉の渇きを潤してくれた。


 俺が麦茶を飲むのを、葉羽と兜が見守るように見ていた。


「おかわりいる?」


 葉羽が空っぽになったグラスを見つめ、俺に問いかける。

 俺は首だけを横に振って断った。

 兜は口数少なかったが、次第に好奇心が抑えられなくて、自分の玩具が入った箱を引っ張り出して俺の側に座った。

 目の前に何かのキャラクターの縫いぐるみやロボットが広げられ、得意げな顔をするので、「すごいな」と、羨ましくもないけど演技で羨ましいフリをしてやると、すぐに打ち解けてきた。


 ちょろいもんだった。


 普段姉とばかり遊んでいるだけに、男の俺と遊ぶ事が楽しく感じたのだろう。

 人見知りだった消極な態度が一変して、笑顔ニコニコと俺にすり寄り甘え出してきた。

 俺も芳郎兄ちゃんと遊んでもらった事を思い出し、昔の自分を見ているようで、兜とはなんとか上手くやって行けそうな気になった。

 男同志だと気を遣う事もない。


 でも目の前の葉羽にだけは、どのように接していいのか、俺は逡巡していた。

 葉羽も同じ思いなのか、まだ恥ずかしげに目だけはじっと俺を見ていた。
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