青い僕らは奇跡を抱きしめる
 その後は機転を利かして開き直ることにし、恥ずかしさを払しょくしようと踏ん張った。


「悠斗君を笑わせるために、わざと失敗しました」


 そんないい訳を言っても、笑ってない俺の顔を見て葉羽は焦り、益々恥ずかしくなっていく。

 それを察知した兜が横からフォローした。


「お兄ちゃん、気にしないでいいよ。お姉ちゃん、いつも失敗してるから」


 淡々と弟に言われ、葉羽はぐうの音もでないで、ひたすらその場で固まっていた。

 俺は見兼ねて、口を開く。


「ああ、そうか。でも掛け声とかは、よかったと思う、多分……」


 とりあえず褒めるところを見つけて、子供心ながらよく言えたなと思った。


「そっか、掛け声は良かったのか。よっし、もっと頑張って皆が喜んでくれるようなマジシャンにならないと」


 葉羽は俺の褒め言葉に助けられ、俺のなけなしの無理した優しさでほっとして、挙句に親近感を抱いて俺との距離がぐっと近くなったような気がした。


 失敗がなぜか功を奏したお蔭で、同じ部屋で一緒に過ごす俺たちは、自然と仲良くなる法則でもあるように、次第に打ち解けていった。

 弾き合ってた緊張がすっかりなくなり、子供同士の他愛無い会話でその場がどんどん和んでくる。

 葉羽はマジック好きな女の子と分かっただけでも、知らずと親しみが湧いていた。


 俺も箱に入っていた葉羽のマジックの道具を触らせてもらい、少しチャレンジしてみた。


 子供用の簡単な仕掛け。

 説明がなくとも、触るだけですぐに使いこなせた。


「悠斗君、初めてなのにすごい。私なんかより素質ある」


 どこまで本気でそんな言葉を言っているのか定かでなかったが、こんな子供だましの手品セットでここまで言われると、よほど葉羽がへたくそすぎるんだといいたくなった。

 でもそれはぐっと飲み込んで、お愛想程度の笑いでごまかした。


 この時は、まだまだどちらもあどけない子供の世界があり、俺もこの姉弟と遊ぶのは気が付けばそんなに嫌じゃなくなっていた。

 兜はすっかり俺に懐いてくれたし、葉羽は慣れると口数も多くなっておしゃまな部分が見え出した。

 俺も大きな声で笑ってると、時々様子を見にきていた葉羽の母親は満足そうに笑みを浮かべていた。

 葉羽は手品の話ができるのが嬉しいのか、俺に詳しい話をし出した。
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