青い僕らは奇跡を抱きしめる
「それでね、そこのサボテン爺さんが私を弟子にしてくれたの」


 どうやら、手品はサボテン爺さんの趣味でもあるらしく、時々子供達に披露して楽しませてくれるとある。

 ただ、そのサボテン爺さんの腕と言うのは信じられないくらいのレベルらしく、その信じられないというのはプロが真っ青という洗練された技術じゃなく、無茶苦茶のなんでもありのレベルで尋常じゃないらしい。


「もうすごいのなんの、技が大きくてあっと驚くの。たまに誰かを実験台みたいにしてトリックを披露したいんだけど、皆はそれになりたくないから時々逃げたりするけど、私は楽しいから喜んで手伝うの。そしたら気に入られて弟子にしてくれたという訳。それから私はシショって呼んでる」


 それを言うなら師匠(ししょう)と「う」までしっかり語尾を発音しろと思ったが、まだ漢字と日本語の単語力が少ないために意味も良くわからず、音だけで適当に覚えたみたいだった。


「そうだ、今から遊びに行こうか。悠斗君のことも紹介してあげる。シショ喜ぶと思う」


 葉羽は思い立ったら吉日のようにすくっと立って、母親に遊びに行くと知らせると、母親は反対することなく笑顔で送り出してくれた。


 兜が俺の手を握って歩いている。


 この暑いさ中、俺は汗ばんだ手で仕方なくそれを受け入れていた。

 こんな俺に懐いてくれるのは、少しほっこりとして癒されるところがあって、正直嬉しかった。

 でもそれは、態度にでないように平常心を装って隠していた。

 この姉弟と一緒に過ごせることが、とても楽しく思ったのもそんな時だった。

 それもそう思う事が負けでもあるかのように、俺はなんだかこの姉弟に自分が染まってしまうのを変に敬遠していた。

 態度だけは不遜に、でも本心は心地いい。


 自分でもどうしようもない意地っ張りだと自覚していた。
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