青い僕らは奇跡を抱きしめる
 やっと一通りサボテン爺さんのショーが終わったところで、葉羽と兜は敬愛を込めて拍手をし、放心していた俺は、一テンポ遅れて慌てて手を叩いた。

 落ち着いたところで回りを見れば、サボテン爺さんの足もとで先ほどよりもさらに部屋がちらかっている豪快なめちゃくちゃさに、俺はお見事と思わずにはいられなくなった。


 これが葉羽が言っていたすごい手品だった。


 葉羽は手品を楽しむというより、このサボテン爺さん自体が好きなのだろう。

 サボテン爺さんも満足した笑みを浮かべて、優しい眼差しを俺たちに向けていた。


「さあ、次はアイスクリームをみんなで食べよう」


 サボテン爺さんは部屋を片付けることもなく、俺たちをダイニングテーブルがある台所に連れて行った。

 金ぴかの衣装にもすっかり目が慣れて、知らずと違和感なくなっていた。

 本当にサボテン爺さんに相応しい姿だった。


 俺たちは案内されたダイニングテーブルの椅子に腰を下ろすと、サボテン爺さんは冷凍庫からカップに入ったアイスクリームを取り出して、俺たちの目の前に置いた。

 それは値段がその辺のものよりも高い、誰もが知ってる高級アイスクリームと謳われるものだった。

 少なくとも俺はこういうアイスクリームを滅多に食べられない。

 さすが金持ちだと、そのアイスクリームを惜しみなく俺たちに差出す、サボテン爺さんの大盤振る舞いの気前良さを感じた。

 家には他に誰もおらず、この時、サボテン爺さん一人で留守番していたらしく、アイスクリームを食べている間とても静かだった。


 ここには他に誰が住んでいるのだろうか。

 子供だったし、誰が住んでようと興味もないから一々聞かなかったけど、回りの整理整頓された様子や、行き届いた掃除から家族はまともな人だと思った。

 サボテン爺さんの部屋だけがあまりにも汚かったのは、家族もきっと匙を投げているのだろう。

 それと家の周りのサボテンも然り。


 その他は、サボテン爺さんの好きにはさせないように、家族も目を光らせているのだろう。

 手品とサボテンを除けば、家族の中でも一目置かれ、周りは干渉なく好きにさせてる。

 初めて会ったけど、葉羽が慕ってるのを見れば、サボテン爺さんの人となりはなんとなくわかるものがあった。


 俺がよその街から来た子供だと分かっても、サボテン爺さんは隔てることなく「はるばる遠い所から、よう来たのう」とまるで自分に会いに来たことを絶賛するように褒め称える。


 すっかり俺もそのペースに取り入れられ、笑いながらアイスクリームを口に入れていた。
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