青い僕らは奇跡を抱きしめる
 学校生活が充実してくると、心にも余裕が現れ、俺は葉羽の事が気になって仕方がなかった。

 あのすれ違いのまま何も変わっていない。

 最初は自分がよそよそしい態度をとっておきながら、葉羽の優しさに甘えて、やっと再び話せるようになったと思ったら、今度は葉羽がよそよそしい態度になってしまった。


 手品を見せてくれると約束したのに、それすらなかったことのようにされて、なんだか俺は寂しくなった。

 男の子と女の子の性別の違いを分ける分岐点とでも言うべき思春期のすれ違い。

 葉羽もまた俺の知らない所で何かの壁にぶち当たって、もがいているのかもしれない。

 俺は自分から歩み寄ることも出来ずに、様子を伺う毎日だった。


 秋の夜長を楽しむ満月が美しく映える夜のことだった。

 友達に付き合って遊んでいたら、すっかり遅くなってしまった。

 辺りはどっぷり暮れて、夜空にはくっきりとした丸いお月様がすべすべしたように美しく見えた。

 その満月を見ながらの帰宅途中、俺はふいにサボテン爺さんの事を考えていた。

 満月の光を浴びたサボテンは不思議なことが起こる、と言っていたことを思い出したからだった。


 あの家のサボテンはどうなったのだろうかと思うと、なんだか無性にサボテン爺さんの家に行きたくなり、俺はうろ覚えの記憶であの家を探し始めた。
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