青い僕らは奇跡を抱きしめる


 前夜の満月の導きによる俺の行動は、次の日の葉羽の態度に即、影響を与えた。

 朝、家を出ようと玄関を開けたとき、葉羽はずっと俺を待っていた様子で、家の門の前でそわそわと立っていた。

 それはあまりにも予期せぬことだったので、朝から飛び上がるほどびっくりしてしまった。


「悠斗君、おはよう!」


 元気よく声を掛けてきた葉羽もまた、前夜の満月の光で魔力を身につけたように力強く、すっかりよそよそしさが消えている。


「お、おはよう」


 心の準備もないままに待ち伏せを食らって、俺の声が上擦った。

 そんな事もお構いなしに、葉羽は焦るようにぐいぐいと俺に迫ってくる。


「あのさ、今日、何時に帰ってくる?」

「ええっと、5時くらいには帰れるかも」


「分かった。そしたらそのときに家に来て」

「えっ?」


「待ってるから」


 それだけを言うと、家の前に停めてた母親の運転する車に急いで乗って行ってしまった。

 葉羽の母親に朝の挨拶もできないまま、あっという間に全てが一瞬で目の前を過ぎていった。

 葉羽も朝の忙しい通学の中、俺に会うためにヤキモキしながら待っていたということだった。


 ドアを叩いてくれればよかったのに、俺の朝の貴重な時間を邪魔したくないと、気を遣ってくれたのが分かる。


 急に事が動いて、それに戸惑い、頭の中で整理がつかず暫く呆然と立っていたが、学校の事を思い出したとたん、足をばたつかせて前につんのめりそうになっていた。


 葉羽の顔を見たことで、心臓がドキドキとしている。

 先ほどの葉羽の面影を頭に浮かべていると、なんだか狐につままれたような気持ちになって、そのままふわふわと足が地につかない感覚のまま学校に向かった。


 一日中そのことに気を取られて、時計ばかり気にしていたように思う。

 一体何が待っているのか、想像もつかなかった。
< 51 / 106 >

この作品をシェア

pagetop