青い僕らは奇跡を抱きしめる
 そこのフランチレストランに予約しているというから、なんだかドキドキしてくる。


 どんなおいしいものが待っているんだろうと、レストランに足を踏み入れテーブルに案内されると、そこにはパリッとしたスーツに身を包んだ見知らぬおじさんが座っていた。


 俺を見るなり席を立ち上がり、ぴしっと背筋を伸ばして取ってつけたような笑顔を俺に見せた。

 母は俺のリアクションを気にしているのか、機嫌を伺うようにおどおどしている。

 そんな中、その見知らぬおじさんは俺の名前を呼んだ。


「悠斗君だね。いつも君のお母さんにはお世話になってます」


 俺は一応軽く会釈したが、母を見れば、心配そうな瞳を俺に向けている。

 俺はすぐに悟った。

 母の恋人──。


「とにかく話は座ってからだ」


 その場はすっかりそのおじさんに主導権を握られた。

 母は俺の反応を気にし過ぎて、口が重そうになかなか説明してくれない。

 その調子から、これはかなり真剣な付き合いで、俺に反対されるのを恐れているのが推測できた。


 俺はテーブルにあったグラスを手に取り、そして一気に水を喉に流し込んだ。

 落ち着くためには冷たいものを胃に流し込んで、感情に走らないように自分でセーブするしかなかった。


 何せ、俺にはあの親父の血が入っている。

 ここで親父のように気に入らない態度を見せるのは癪だった。
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