青い僕らは奇跡を抱きしめる


 二、三日、俺は母親とあの狭いアパートで過ごした。

 久し振りに戻ってきた住み慣れた土地だったけど、暫く離れていると感覚が鈍り、さらに母の再婚話で落ち着かなかった。

 お小遣いを貰って懐は温かかったので、気晴らしに本でも買おうと街に出てみた。

 ここの街が本来の自分の住むべき所なのに、伯母の家に住んでいるだけでなぜか蔑むように見つめてしまう。


 住む場所が変わっただけで高貴になった訳ではないのに、少し高飛車な気分になったのは、自分が偉くなったと思われたい願望だったのかもしれない。


 そんな時、賑やかな繁華街の通りにあるゲームセンターの前を通れば、柄悪くたむろしている奴らと出くわした。

 そいつらは俺の知っている顔で、忘れもしない俺を殴った奴らだった。


「芹藤、お前生きてたのか」


 こんなちっぽけな負け犬の俺のことなど無視すればいいものを、多勢に無勢で気が大きくなって俺に絡んでくる。


 学校も違うし、今では全く関係のない他校の生徒なのに、あたかも力加減をみせつけたいかのようにえらそぶっていた。

 俺は辟易して、あいつらを見るだけでムカついて吐きそうになってくる。


 俺には関係ないと無視をして歩けば、あいつらは導火線に火がついたように後戻りできずに追いかけてきた。


「お前、相変わらず生意気なんだよ。学校まで変えて逃げやがってこの卑怯者」


 何が卑怯者なのだろう。

 自分の妄想で勝手に腹を立てておきながら、全てを俺のせいにして理不尽に大勢で暴力を投げかけるくせに、なぜ俺の方が卑怯者と呼ばれるのか、俺はムカついた。


 俺も未熟者だった。

 無視してやり過ごせばいいものを、火に油を注いでしまった。
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