青い僕らは奇跡を抱きしめる
「卑怯者はそっちだろ。何もしてないのに、しかも一人に対して大勢で殴ってくるんだから」


「なんだと」


 正論も言えない、相手に本当の事を言われただけで腹を立て、声だけで凄みをつけて脅してくる。

 こういう奴はいつも暴力に身を任す。

 自分が上である事を見せ付けたいために、自分の力を誇示したいために、悪ぶって弱いものを征服したがる。


 俺は一度は逃げてしまったかもしれない。


 でも、俺の中の鬱憤がこの時掘り起こされて、昔の分までかき集めて膨れ上がってしまった。

 悔しくて、ただ我慢するだけしかなかったあの頃の俺を取り戻したくて、俺も負けずに言ってしまった。


「どうせ勉強も碌にせず、成績も悪い底辺の人間のくせに偉そうにするんじゃねぇよ」


 これは本当のことだと思う。

 俺はしっかりと勉強して転校してもいい成績を収めている。

 こいつらよりは頭がいい。

 俺が言ってこそ意味を成す言葉だと思った。

 そいつらはバカなくせに、本当の事を言われるとなぜ怒ってしまうのだろう。

 案の定、あいつらの導火線は燃えつくされ爆弾が爆発するごとく怒り狂ってきた。


「このゲロまみれ野郎、調子に乗りやがって」


 やっぱり怒ったか。

 この展開もわかりきっていた。

 今回は俺だって負けていられない。


 俺がこんなに気が大きくなったのも、どこかで母親の再婚がひっかかり、本当はそれを素直に喜べず、それまだしも、自分の知らないところで勝手に決められて腹が立っていたところがあった。


 俺も虫の居所が悪かったということだった。

 例え、束になってかかってこられようとも、俺はもうあの時の俺じゃないことを証明したかった。

 俺は辺りを見回した。

 何か使えるものはないか、武器となるものを探していた。

 一人が俺の体を取り押さえようと走ってきたが、俺は側にあった自転車を倒して道を塞いで、走り出した。

 年末の年の瀬の慌しい時、人通りも激しく、周りは追いかけっこをしている俺たちをとりあえずは見ていたが、よくある光景の一部として気にも留めていなかった。


 俺は人と人の間をすり抜け、そして手当たり次第に倒せる障害物は倒していた。

 その度に、店の人や通行人に怒鳴られたけど、気にしていられなかった。
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