青い僕らは奇跡を抱きしめる
 その晩、また眠れなくなり、自分のしでかした事がフラッシュバックして苦しくなってしまう。


 でもあの時の葉羽が言った『将来先生になるよ』という言葉が思い出されて、不思議でならなかった。


 一体どこからそんな話になったのだろう。


 まだ将来、何になりたいのか自分でも決めたことがなかった。


 勉強だけは義務でやってきたけれど、自分が先生になりたいなんて思ってもみなかった。


 時々兜の宿題を手伝っては分からないところは教えてあげたが、葉羽はそれを見てたからあんな事を言ったのだろうか。


 教師という職業について俺は暫く考えてしまった。

 自分がもし教師になったとしたら、俺はいじめっ子をとことんお仕置きしてやりたい。

 そして弱い俺のような境遇の生徒を可愛がって、将来立派な道に進めるように指導してやりたい。


 俺が自分にそうして欲しいと願うように、自分の中で理想の先生像というものを想像していた。


 しかし、そんなことで気分が紛れるわけもなく、葉羽に八つ当たってしまったことは、今頃になって恐ろしく罪意識を感じる。


 そしてそれがずっと尾を引いてしまって、また暫く葉羽と会わないでいると、二人の間には深い溝がどんどん広がっていくように思えた。
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