青い僕らは奇跡を抱きしめる
 伯父はその時、葉羽の母親と何かを話している様子で、落ち着かせようと母親の肩に手を置いて労っていた。


 その母親の隣で、母親の服のたもとをしっかりと握り、兜は虚ろな目で無表情に立っていた。

 それが俺を余計に不安にさせた。


 葉羽の母親は、近所にご迷惑をかけた事を、暗闇に溶け込んで集まっていた人々に頭を下げて謝りだした。

 そしてその後は、兜を引っ張って家の中に入って行った。


 これから色々と準備して病院にいくつもりなのだろう。

 俺はただ呆然とその様子を見ていた。


 伯父がいかにもお気の毒という顔をして戻ってきたとき、俺は何が起こったか知りたくて、無言で不安げに見上げた。


「とにかく中に入ろう」


 伯父も本当は良く分かってなかったのかもしれない。

 家の中に入って居間のソファーに座ったとき、腕を組んで考え込んでいた。


「あなた、一体何を聞いたの?」


 伯母も気になるのか、痺れを切らして口を挟んでいた。


「なんでも血がどうのこうので、葉羽ちゃん急に倒れたそうなんだ」

「それって、重度の貧血ってこと?」


 俺も口を挟んだ。


「まあ、そうなるのかな。でもあの慌てぶりはどうも、なんていうのか、かなり深刻な問題を抱えているように見えてなんか心配でな」

「でも貧血でしょ。女性にはよくあることなんでしょ」


 俺は大したことないと思いたかった。


「そうかもしれないけど、とにかく何事もないといいんだけど、あの状態では……」


 伯父の言い方は、嫌な感じで歯切れが悪かった。


 何かとてつもない悪い予感がする。


 そして暫くしてから、家のインターホンが鳴った。


 伯母が対応したが、俺も気になって玄関先を覗くと、そこには兜を連れた葉羽の母親がやつれた姿で立っていた。
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