青い僕らは奇跡を抱きしめる


「もちろん大丈夫よ。兜ちゃんのことは心配ないから」

 伯母の対応を聞いていると、どうやら、兜を今晩預かって欲しいと頼みにきた様子だった。

 これから必要なものを持って病院に行くため、小さい兜は足手まといになるし、また一人で留守番させるにはまだ小さすぎる。

 無理を承知で、伯母に助けを求めに来ていた。

 伯母はすぐに理解して、少しでも重荷を軽くしてあげたいために喜んで引き受けた。

 兜は不安そうに、焦点も合わせず、虚ろな目をしていた。

 俺が手招きしてやると、兜は母親と伯母の顔を交互に一度見て、許可を取ってから家に上がった。


「それじゃお願いします。本当にご迷惑お掛けしてすみません」


「全然、気にしなくていいから、兜ちゃんの事は私たちに任せて、とにかく安心して出かけて頂戴ね」


 伯母は葉羽の母親を労い、なんとか励まそうとしていた。


 すでに心労で疲れ切っていた母親は、気を張りつめ踏ん張ってはいるが、少し突いたら簡単に崩れそうだった。


 俺もまた不安でいたため、去ろうとしていた母親に、迷惑顧みず咄嗟に声を掛けた。


「あの、葉羽は大丈夫なんですか」


 母親は神経がすり減っているのに、精一杯の笑みを俺に向けて気を遣ってくれた。


「ええ、大丈夫よ。悠斗君、心配してくれてありがとう」

「その、落ち着いたら、必ず会いに行くって伝えてくれませんか」

「わかったわ。葉羽に会ったらすぐに伝えておく。葉羽もきっと喜ぶと思うわ」


 そして静かにドアを閉めて、行ってしまった。
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