青い僕らは奇跡を抱きしめる
 俺が暫く突っ立ったままでいると、兜が服の裾を引っ張ってきた。


「前もこんな調子だったの。お姉ちゃんまた我慢してこんなになっちゃった」


 前回と同じように入院したら、また元気になって戻ってくることをいいたかったらしい。

 不安な俺の表情を読み取ってか「大丈夫だから」と、一生懸命、俺を慰めようとしてくれた。


 俺よりも小さな兜の方が、突然姉が倒れて、混乱して不安だというのに、俺に気を遣ってくるところは葉羽と気質が似ているらしい。


 俺は兜の頭をぐしゃっと撫で回した。


 そんなこと分かってる。

 小さいくせに気を遣うんじゃねぇ。
 

 そういう気持ちもあったが、俺なりの可愛がり方だった。

 兜もそれを感じ取ったのか、あどけない笑顔を見せてくれた。


「さて、兜ちゃんの寝るところ用意しなくっちゃ。さあ誰と寝る? おばちゃんがいい? それとも悠斗お兄ちゃんかな?」


「お兄ちゃん!」


 元気のいい兜の声が周りを明るくする。

 お陰で俺も少し気が紛れた。


 葉羽はまた少しの入院をして、そしてすぐに戻ってくる。


 その時、俺は謝らなくっちゃ。


 葉羽のあの意識がない顔を見たとき、正直俺は恐怖で体がすくんだ。

 あの時、どれだけ葉羽が大切なのか、鞭を打たれるように気がついた。


 葉羽に酷い事を言ってしまったけど、葉羽は人よりも体が弱く、いつ倒れるか分からない貧血が葉羽の辛い悩みだったに違いない。


 そんなことも汲み取ってやれずに、俺は自分のことしか考えられず八つ当たってしまった。

 今度こそ、きっちりと謝って、そして自分の気持ちを正直に言おう。


 俺は本当は葉羽が好きなんだって。

 だからいつも甘えてしまうんだって。


 構って欲しいから、わざと気を引くような事をしてしまったんだって。


 意地を張ってしまうのは、それだけ葉羽の事が好きで、その気持ちを悟られるのが恥ずかしかったんだって。


 もうプライドなんて気にしてる場合じゃない。


 人はいつも何か大変な目にあってから、大切なことに気がつく。

 それが手遅れになってからでは遅すぎる。


 そうならないためにも、俺は素直になって洗いざらい自分の気持ちを葉羽に伝えないと。

 もう自分勝手のままではいられない。


 葉羽への思いがどんどん募って、俺の心は熱くなっていた。
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