青い僕らは奇跡を抱きしめる
 あの奇跡を見たとき、俺はもちろんびっくりしたけど、子供達に気づかれないように、葉羽のことは黙っていた。


 葉羽が偶然のことから自分の病名に気づいてショックで塞ぎこみ、俺との関係もよそよそしくなっていたあの時、俺は満月の光に誘われて葉羽の家に押しかけた。


 その時サボテンを満月の光に晒して欲しいと母親に頼んだら、葉羽はあの日そうしたのだと思う。

 サボテン爺さんがいっていた、サボテンの不思議な力が、この時奇跡を起こしたと俺は信じている。


 俺が訪ねたあの晩、葉羽はお風呂に入ってた。

 その後で、母親から俺の伝言を聞いて実行したに違いない。


 あの満月の夜にあのサボテンは花を咲かせ、奇跡を起こした。

 俺の授業に現れた葉羽の髪の毛が濡れていて、パジャマを着ていた姿を見たら、あの時の葉羽だと疑う余地はなかった。


 俺の教師になった姿と手品をしているところを見て、葉羽は自分の役割を感じたのだろう。

 そう思えば、あのときの会話の辻褄が合うし、葉羽がいった言葉の意味も理解できる。


 『うーん、上手く言えないんだけど、その奇跡は私の使命みたいなものだったから』


 葉羽は未来の俺をあの時見たから、手品を教えようと慌て出したのだ。


 例え自分が重い病気と知ってしまっても、塞ぎ込んでる暇はないと、俺の未来のために一生懸命になってくれた。

 自分も苦しかったのに、俺のことを第一に思ってくれていた葉羽が愛しくてたまらなかった。
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