あなたの幸せ、買い取ります [短編]
 数ヶ月前、家の近くに怪しげな店が開店した。なんせ店のキャッチコピーが
「あなたの幸せ、買い取ります」
だから怪しい以外のなんでもない。
噂で聞いたのは幸せは結構ないい値段で売れるらしいということと、店からでできた人はみんな大金を手にしたからか笑顔らしい。
怪しくても背に腹は変えられないので仕方なく幸せを売ろう。私はその店に行くことにした。
 
「あなたの幸せを願っております。」
 この声と同時に一人のお客が出てきた。なんという皮肉。幸せを売った人に言うことなのかと私は心に思った。まあそんなことはどうでもいいから店に入ることにした。
 
店に入ると白を基調としたシンプルな部屋に一人二十過ぎくらいの女性が座っていた。
 
「いらっしゃいませ。幸せを売りにこられたのですか。買いにこられたのですか。」
 
そういった女性はオペラで使われるような目元だけ隠れる黒い仮面をつけていた。幸せを売っていると言うのは初耳だ。
 
「幸せは高く売れると聞いて、売りにきました。」
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