あなたの幸せ、買い取ります [短編]
 「分かりました。ではこちらにおかけください。」

 部屋には椅子が対面で並んでいて、真ん中にテーブルがある。私が座ると、店員さんは奥に行ってしまった。しばらくすると紅茶カップとともに戻ってきた。

 「申し遅れました。私は幸せの仲介人の零と申します。」

 仲介人とはうまく言ったものだと思った。テーブルの上にかすみ草のプリザーブドフラワーが飾られていて、皮肉なものだなと思った。

 「幸せを売るには手順を踏まねばなりません。しかし、そんなに難しく考えないで大丈夫です。ただ私の質問に答えていただくだけで結構です。あなたはその質問に対して思ったことを素直に答えてください。また、何か質問があればいつでも聞いてください。質問に関係ないことでも構いません。」

 私は幸せを売りにきたことよりも、この零さんと言う人がどんな人かが気になった。
零さんはとても若いように見えるが右手の薬指には銀色の指輪が光っていた。
色々と思っているうちに零さんからの質問は始まった。
 
「あなたにとって、幸せとはなんですか。なるべく具体的に教えてください。」
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