アメリカでの暮らし
飛行機から降りて、凛花とは一旦別れた。これ以上迷惑はかけられない。もちろん一緒に暮らそうと告げられたが、カレンも忙しいのだから、と梨花が大反対だったので二人揃って路上で寝ることになったのだ。「これこそ野宿ってやつね」と腹立たしげに頭についたホコリを払った。
「Are you all right?」
急に聞かれたので慌てて
「あたしたち、野宿です!なんにも気にかけないでお通りください!私達はなんにもしていません!えーと…あいうえお!通じないですか?!あー…」
その子の顔を見ると私達はハッとして一歩引いた。その子は有名なモデルで、子役としても活躍していて、しかも超大企業の社長さんの大のお気に入りの長女さんなのだ。
私達はビビってお辞儀をしてそそくさと立ち去ろうとした。
「あなたたーち、どうしーたのですか?」
カタコトの日本語で聞かれて、私は深呼吸しゆったりとした口調で言った。
「私達、家出してきました。日本から」
その子…カレンさんは驚いたような哀れむような表情を私達に向け、
「寒いーくないのですーか?」
その一言だけを私達に静かに伝えた。
「あー…寒いです…」
梨花がバツが悪そうにちらちら私とカレンさんを見比べて少し縮こまって言った。
「そこでなにーをしてるーのですーか?よーくもまーあ、ここまではるばーるやってーきたのーでーすね。タイヘーンなこーとだったでーしょう?」
「ええ、はい、まあ」
その子は私達に手招きして流れるような金髪の髪をなびかせてすっと頭に帽子をかぶり、マフラーをいきなりほどいて私に渡し、コートを脱いで梨花に渡した。
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