難病が教えてくれたこと
李那にとって俺ら陸上選手は煩わしいだろう。
李那がなりたいはずの陸上選手…
俺が、叶えてあげたい…
「私の夢は柊が叶えてくれる。」
「…うん」
「正直いって私のが早いけど、唯一私が認めた足だもん。
叶えてくれると信じてる。」
李那…
言葉では罵声浴びせたりしてるのに心の中では認めていたんだな、柊の事…
「さ、中入ろ。柊にみっちり教えなきゃ。アホだから。アイツ。アホだから。」
…2回言った…

「ーお待たせ。」
「見ろ如月!」
部屋に入るなり、柊がノートを李那の目の前に差し出す。
ノートで李那の顔を被ってるようなものだ。
…みえるわけがない。
「見えない。どけて。座るから。」
「さーせん。」
李那は松葉杖を上手に使って座る。
座ったのを確認して俺も座る。
「如月〜」
「何。」
「合ってる??」
「…あー、計算ミス、はいやり直し。」
「ぇぇえええ?!」
「公式あってるのになんでミスるかな。」
怒りを通り越して呆れ返る李那。
…まあ、しょうがねぇよな。
アホだから。柊は。
「…李那、ここって…」
海澪ちゃんが大人しく李那に聞く。
「…私化学嫌い。」
「あー…」
「でもあってる。それでいい。」
…嫌いな科目はとことん勉強しなかった李那が…
李那も頑張ってるんだ、俺も頑張らなきゃ。


ーテスト当日。
「それではようい…はじめ!」
先生の声で一斉にみんながシャーペンをはしらす。
このテストは2年で最後のテスト。
学年末だ。
範囲はものすごく広い。
落ち着けばできる。
李那に教えてもらったことを思い出しながら…と。
…柊も確か今日からだったよな、テスト…
大丈夫なのか、あいつ。

「いやあ、疲れたなあ〜」
テストは全ての科目。
とりあえず最終日が終わり、これから悪魔のテスト返しがあるはずだ。
テスト返しされながら順位発表もされる。
今までは李那が学年10位以内には入っていたけど…
…俺、入れるかな…
「見に行こうよ、裕くん。」
「そうだね、行こう。」
俺は蒼空と海澪ちゃんと茉希ちゃん沙良ちゃんと一緒に順位を見に行く。
「お、最下位じゃない。」
それは喜ぶところ?
沙良ちゃん…
「あ、私50番も上がってる!」
茉希ちゃんは凄い。
「俺も、いつもよりは上がってる。」
蒼空は…と。
…5位?
え、凄い。
「あ、私もそこそこ。」
海澪ちゃんは…
8位?
…あ、俺あった。
12位。
なかなか上がった。
李那これで怒らなくて済むな。
…柊の結果次第だが。
「あ、秀一。」
海澪ちゃんの携帯がなり、みんな興味津々で見つめる。
「あ、何?順位…
…すごいじゃん。」
海澪ちゃんは喋りながら指で柊の順位を示す。
3…5…
35位?
あいつにしては頑張ったんじゃ…
すげえ、うん。
俺も、報告だ。
プルルルル…
コール音が1回、2回、3回。
3回きっかりで李那は出た。
『もしもし?』
「あ、李那?
テストの順位、張り出されたんだけどさ、すげえよ。
俺、12位で、海澪ちゃんは8位、蒼空が5位、茉希ちゃんが50番も上がってる沙良ちゃんは最下位じゃなかったんだって!」
『…おお、すごいじゃん。
で?問題の柊は?
どーせ、海澪が電話してるんでしょ?』
「あー、あいつは35位だったらしいよ。」
李那が電話の向こうですごく驚いているのが伝わってくる。
『柊にしては頑張ったんじゃない?
最下位から35位なんだもん。』
李那、あいつの順位知ってたんだ…
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