難病が教えてくれたこと
私まだ帰らないんだけどなあ…
今から秀一と会うし。
「うん、じゃあまた。」
私は裕くんに手を振って李那を見てから病室を出た。
ーブーッブーッ…
丁度病院を出たタイミングで電話がかかってくる。
「もしもし。」
『あっ、出た。
今近くに居るから待ってて。』
ん?近く…?
プチッと電話が切られ、仕方なく私は近くのベンチに移動した。
ベンチから病院に入院している子どもが楽しそうに遊んでいるのが見える。
…子どもって元気だな…
「あのっ…お姉さん…」
「ん?」
子ども達を眺めていた私に恐る恐る声を掛けてきた5歳くらいの小さな男の子。
「お姉さんって…李那ねーちゃんのお友達?」
「李那?うん。そうだよ。」
李那が仲良くしてた子かな?
「李那ねーちゃん、今どこにいるの?
いつものお部屋いなくて…」
「…ああ、移動したからね。ちょっと待って。」
私は携帯を取り出して裕くんに電話をかける。
裕くんは直ぐに出た。
『どうしたの?』
「5歳くらいの男の子…李那のこと探してるんだけど…」
『あ、もしかしたら翔くんかな。』
「君、名前は?」
「翔…」
「翔くんだって。」
『分かった。迎えに行くよ。中庭?』
「そう。」
裕くんは今からここに来るみたい。
ちょっと急ぎ足で電話を切ったのが分かる。
「今から裕くんが迎えに来るからお姉ちゃんと一緒にまってようね。」
後ろから声が聞こえるけど無視。
聞けば翔くんは小児がんだとか。
手術が終わって報告をしたいんだと。
そのために李那の病室に行ったけど、いなくて探しているんだって。
「あ、翔くん。」
「裕にい!」
裕くんは少し息を乱して私たちのところに来た。
翔くんは裕くんを見て飛びつく。
「李那ねーちゃんのところ行きたいんだけど…」
…李那、か。
今の李那を翔くんが見たらどう思うんだろう。
「…分かった、行こう。」
裕くんは少し寂しそうな顔をして翔くんの手を引き、また病院の中に戻って行った。
「ちょっと海澪?」
「はい?」
「なんで無視するの?」
「うるさかったから?」
ニッコリ微笑んで後ろをむく。
裕くんより息を切らした秀一が私の後ろにたっていた。
なんでこんなに息乱れてるんだろ。
陸上部なのに。
「今からどうする?」
「金はある。」
秀一はポンポンとポケットを叩く。
チェーンでズボンと繋がっている財布がちらりと見える。
「カラオケでも行きますか!」
「よし、乗った。」
私と秀一は暇すぎてカラオケに向かうことになった。

李那が目覚めたのはこれから4日のことだった。
【古川海澪side END】
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