難病が教えてくれたこと
李那は現役時代陸上の短距離エースだったから。
「私と風雅は今からだよ!見ててね!」
「分かったー」
「見てるわ。」
俺の弟と李那の妹。
今体格ほぼ同じだ。
若干美那ちゃんの方が身長が高い。
まあ、小学生だからかな。
俺も小学生の頃は李那に身長抜かれてたし。
「ぜってー負けねぇ!」
「私が勝ったらアイス奢りね」
「その言葉返してやるよ!」
なんだかんだ言って風雅は美那ちゃんのことが好きなんだと思う。
如月家の姉妹は可愛いから。
奈那さんは綺麗系の人だった。
2年前だっけ、死んだの。
たしか俺達が15の時だから…
4歳差の姉妹だったんだっけ。
「裕くん、風雅くんも美那もアンカーだよ。」
「ほんとだ。」
2人はクラスが違うため、ライバルだ。
美那ちゃんは6年1組、風雅は6年2組。
なかなかの接戦だ。
バトンはほぼ同時にアンカーに渡った。
「あ、美那足くじいた。」
「うわ、あれは痛いぞ…」
思いっきり足挫いていたのに美那ちゃんはその足を気にせず追い上げていく。
風雅を抜いて1着でゴール。
「余程アイス奢りたくなかったんだね。」
「…意地っ張りだな」
「間違いない。そして美那はあー見えて負けず嫌いだ。」
「おねーちゃーん!」
「ほら来た」
美那ちゃんはひょこひょこ歩きながら俺たちのところまでやってきた。
「おい!美那!」
後から風雅も走ってくる。
「お前さっきくじいたろ?!救護テント行くぞ!」
「大丈夫だよ、風雅くん。私がするから。」
李那はカバンの中からお馴染みの救急セットを出てきた。
中には絆創膏や湿布、テーピング、消毒液、ガーゼ、テープなど様々なものが入っている。
それだけ自分が怪我するからなのか…
「ほら美那、足。」
「うん、ありがとうお姉ちゃん」
テキパキと救護する李那。
「李那、お前の方は大丈夫か?」
「ん、平気だよ。」
「ならいいけど。」
美那ちゃんは手当してる李那を寂しげに見つめていた。
「お姉ちゃん…」
「ん?」
「お姉ちゃんも、走り回りたくてしょうがないんだよね?」
【中矢裕side END】
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