難病が教えてくれたこと
「…俺は…」
ポツポツ話し始めた裕さん。
俺は静かに話を聞く。
李那の心の傷がかなり深いことを知ることになる。
【更科蒼空side END】

【中矢裕side】
「俺は…」
浮気した件は知ってるよな。
あの時、李那は少し俺と距離を置いていた。
裏切られるのが怖かったのかもしれないし、別れ話を切り出されたくなかったのかもしれない。
詳しいことは分からないが李那は俺と少し距離を置いていた。
それ以前にも俺は李那を傷つけるようなことをしてしまっている。
あれは事故にも入ってしまうかもしれない。
ライト…
ランニングをしていて懐中電灯のライトを李那に向けてしまったんだ。
少し言い合いをしてしまって、カッとなってしまってね。
そのライトが右目に直に当たってしまって…
夜だったこともあって普通に眩しかったんだと思う。
実際眩しいライトを使っていたから。
それからの李那に違和感を感じたのは2日後の部活のとき。
『あれ?李那…?』
『ん?どうしたの?』
『なんで目、洗ってるの?』
水飲み場で李那が右目を洗っていたんだ。
それ自体は別に珍しい事でもない。
『実はさ〜…ちょっとおかしくて。』
『どういうこと?』
『なんて言うのかなあ…右目だけ曇ってる。』
体の血の気が逆流したような感じがした。
その原因を作ったのはもしかしたら俺かもしれないから。
『…いつから?』
『おかしいなと思ったのはランニング…2日前のランニングのあとかな〜…』
やっぱり、原因は俺かもしれない。
俺は李那の家に行き、李那のお母さんに伝えた。
『李那、目…おかしいんだ。右目なんだけど…
俺の思いすごしでもいい、眼科で診てほしい…』
思い過ごしならそれでいい。
だけど明らかにおかしい。
普通に走っていても左に寄ってくる。
本人はまっすぐ走っているつもりなのかも知れない。
だから、不安で李那のお母さんに頼んだ。
診断はやっぱり見えなくなっていた。
…俺のせいだ。
李那の選手生命を…
『別に大丈夫だよ!走れないわけじゃないから!』
リハビリで片目でも走れるようになったが、選手生命が絶たれたのは間違いなかった。
李那の目は…俺が潰したようなものだから。
知らない場所で走ることは不可能だ。
大会に行くと必然的に距離感が掴めない。
俺のせいだ…
『気にしないで』
李那は笑っていたけど、悔しくて仕方なかったかもしれない。
生まれつきあまり視力は良くなかったらしいが普通に見えていたから。
その時から…李那の走りに本気が出なくなってしまった。
本気で走ることはなくなってしまったんだ。
【中矢裕side END】
< 151 / 200 >

この作品をシェア

pagetop