難病が教えてくれたこと
【更科蒼空side】
李那にそんな過去があったなんて…
李那の目が悪いということすら知らなかった。
「李那の選手生命を奪ったのは…俺だ。」
「…」
「俺が李那の人生を狂わせたんだ。
あんなことにならなければ李那は真っ直ぐ陸上選手になっていたのに…」
「…」
裕さん…
正直、話を聞いた時は驚いたけど…
事故でもあるんだからそんなに思い詰めなくても…
「…李那に対しては正直謝罪しかない。」
苦笑を浮かべながら裕さんは空き教室から出ていく。
「裕さ…」
声を掛けるより早く裕さんは教室に帰っていく。
俺は携帯を見つめる。
『李那、今日家行っていいか?』
何を伝えたいのかは自分でも分からない。
ただ、李那に会いたくて仕方なかった。
『別にいいよ。』
李那からの返信は素っ気ないけどきっと本人は少し不思議そうな顔をしているだろう。
それでもいい。
自分でもなんで会いたいのか分からないから。
『何かあった?』
珍しく李那が連続で送ってくる。
そして李那にしては珍しく他人の話を聞こうとしている。
『特には何もないんだ。
普通に話したいだけ。』
『そう?分かった。』
李那は不思議で仕方ないだろう。
俺だって不思議だ。
「…早く会いてぇな」
諦めなければならないのは分かってる。
2人の間にはもう、入る隙間がないのも知ってるから。
それでも、好きなんだから仕方ないじゃないか。
「…どうすればいいんだよ…」
好きすぎて頭がおかしくなりそうだ。
【更科蒼空side END】

【如月李那side】
「…よっ…こいしょ…っと…」
ふぅ。
移動だけでこんなに疲れるとは。
叶夢を寝かしつけるのは楽だけどさ…
ーピンポーン
「はーい」
この時間だから蒼空ではないかな。
って思ってたのに…
「やあ」
なんでいるの。
まだ学校の時間ですよ。
ねえ、蒼空くん。
「来ちゃった。」
「…まあいいけど。どうぞ。」
最近のウチの常連だな、こいつ。
叶夢にベッタリくっついてるけど。
さてさて、今回は何があったのかな?
「なんかあったの?」
「…」
蒼空は叶夢から離れてソファに座る。
「…」
来たのに何も言わない蒼空。
「…悩み事?」
「…ううん。違う。」
「何?」
「…聞いた。」
「え?」
ボソボソ、頼りなく話し始めた蒼空だけど。
全く聞こえない。
「目、の事聞いた。」
…あぁ。
その事か。
裕くん辺りから聞いたのかな?
それとも、裕くん本人から聞いたのかな?
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