難病が教えてくれたこと
どちらから聞いたとしてもまあいいんだけど。
もう左目だけで普通に生活は出来るし。
困ったこともないから。
「目の事聞いた時は正直、驚いたよ。
そんな経緯があったなんて思ってなかったから…」
普通は知らないでしょ。
多分小宮先生でも知らなかったと思うよ。
「まあ、今では普通だし、多分誰も気づいてないと思うよ。」
さっきから感じてた違和感。
やっとわかった。
蒼空、さっきから私と目を合わせようとしてない。
なに?私何かした?
「ねえ蒼空。」
「…」
なんで黙るの?
私、何もしてないよね?
「なんで私と目を合わそうとしないの?」
「そんな、つもりは…ない…」
嘘だ。
蒼空は嘘をつく時少し斜めを見るくせがある。
私は車椅子で蒼空の前まで行く。
「ねえ、話して?何があったの?
蒼空がまず理由もなしに私に会いに来るわけないでしょ?」
「…」
蒼空の顔をのぞき込む。
のぞき込んで私の動きは止まった。
蒼空は…泣いていた。
…何が蒼空を追い詰めてるの?
蒼空の中で何が起こってるの?
「ごめん、李那…」
「こないだからその言葉しか聞いてないんだけど。」
蒼空はこの間から私に謝ってばかりいる。
何を考えてるのか分からない。
「李那…ごめん…」
「落ち着いて。」
涙をポロポロ零しながら謝る蒼空。
何に対して謝ってるのか分からない。
「落ち着いてからでいいから、話して。」
「…ん…」
ぐすぐす泣く蒼空の声だけが私と叶夢しかいないリビングに響く。
…こういう時、どうすればいいんだろう…
確か、裕くんはそばにいてくれた。
私に蒼空のそばに寄る権利はない。
「…ごめん、落ち着いた。」
「あ、良かった。」
真っ赤な目をしている蒼空。
「李那さ、フッてくれたよな、俺を。」
…文化祭の時か…
「…うん。」
「……本当はあの時で諦めなきゃいけないって分かってるんだ。これでも。」
蒼空…もしかして…
「…だから、何度でも謝る。
…ごめん、李那…俺、まだ李那の事好きだ…」
胸がキューってなる。
蒼空の気持ちはすごくよく分かる。
勇気をだして言ってくれてるのもよく分かる。
…でも私は蒼空の気持ちには答えられないんだ。
答えたら裕くんを裏切ることになるから…
「…蒼空、私」
「いいんだ、分かってる。」
私の言葉に被せるように蒼空は私の口を押さえる。
…聞きたくないんだね、よく分かる。
「李那はこんな俺にも優しい笑顔を見せてくれた女の子、だから、何度でも伝えたかったんだ。」
「…」
「…俺が、幸せにしたかった…」
…蒼空と出会った頃には裕くんと付き合ってたしね…
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