難病が教えてくれたこと
蒼空の気持ちは嬉しいけど、やっぱり答えることは出来ない。
叶夢と裕くんを裏切るなんて出来ない。
裕くんを恨んだ時もあったよ。
目のせいで陸上選手の夢を諦めたのも事実。
だけど、罪悪感からかもしれないけど、裕くんは私に謝って、罪を償ってくれてる。
隣で支えてくれてる。
…そんな人を裏切る訳にはいかないんだ。
だから、ごめん、蒼空…
「…本当にごめんなさい、蒼空…」
私だってこんな言葉言いたくない。
実際裕くんと別れていた間、私を慰めてくれていた蒼空にはきゅんとしたから。
だけど、…私には裕くんしか居ない。
私にとって大事な人は裕くんしか居ないの。
「…分かってるよ。李那がどれくらい裕さんのことを好きか。
だけど、好きなものは仕方ない…」
「…」
「李那にはさ、幸せになって欲しいから。俺が茶々入れちゃダメなんだ。
だから、勝手に好きでいるからさ。」
「…」
「…ごめん、嘘。本当は俺が幸せにしたかったんだ。
次の恋に行けるまで、李那のこと、好きでいさせてくれないか…まだ諦められそうにない…」
かける言葉が見つからないって、こういう時に使うべきだと思う。
蒼空の顔は涙でぐしゃぐしゃで…
ぎこちなく笑ってる。
でも私には蒼空の涙を拭く資格はないから。
…ごめん、蒼空。
「…こういうことを言うのは私の我儘なのかな。」
「…ん?」
「…蒼空とは友達でいたい。
今すぐに友達に戻るのは難しいかもしれないけど、私は蒼空と仲良くしていたいの。」
本当に私は我儘だと思う。
私のことが好きな蒼空にとって、この私の我儘は聞けないだろう。
でも私は…蒼空とはずっと友達でいたい。
「…」
俯いてしまった蒼空。
どんな顔をしているのか分からない。
「…蒼空…」
私が蒼空の立場だったら…やっぱり嫌かもしれない。
好きな人にフラれてすぐ友達に戻れるほど神経図太くない。
それでも私は…蒼空と仲良く笑っていたい。
「…李那がそれを望んでくれるなら喜んで。」
ぎこちなく笑った蒼空は真っ赤な目をしていて…
見てて耐えられなくなりそうだ。
それでも私が泣くわけにいかない。
…いかない、のに…
「李那…ごめん、泣かせたかったわけじゃないんだ。ただ、本心を伝えようと…思って…」
…分かるよ。その気持ち。
分かるけど…
蒼空にはずっと支えてもらっていたし、隣で馬鹿げた話もしてくれた。
そんな蒼空の優しさを知ってるから余計に辛いんだ。
…1番辛いのは蒼空なのに…
「李那を泣かせたかった訳では無いんだ…
混乱したよな、ごめんな、李那…」
こんな時でも私の心配をしてくれて頭を撫でてくれる蒼空。
感謝と同時に罪悪感もある。
< 154 / 200 >

この作品をシェア

pagetop